9月議会定例会(2020)

大久保清美 一般質問 質問項目

1.東海第二原発の再稼働問題について
 (1)新安全協定を使いこなすことについて
 (2)広域避難計画策定について

2.東海再処理施設について

ひたちなか市議会9月定例会(一般質問)報告

1.東海第二原発の再稼働問題について
(1)新安全協定を使いこなすことについて 

 平成30年3月29日に改正された「日本原子力発電株式会社東海第二発電所の新規制基準適合に伴う稼働及び延長運転に係る原子力発電所周辺の安全確保及び環境保全に関する協定書」、いわゆる「新安全協定」の第2条には次のように書かれています。

(事前説明及び意見交換)
第2条 乙(日本原子力発電株式会社)は、東海第二発電所の新規制基準適合に伴い原子力発電所を稼働及び延長運転をしようとするときは、事前に甲(東海村及び日立市、ひたちなか市、那珂市、常陸太田市並びに水戸市)に丁寧に説明するものとする。

2 甲は前項の乙の説明に関し意見を述べることができるものとし、この場合において乙は誠意をもって回答するなど甲の理解を得るよう最大限努めなければならないものとする。

 私は、昨年の2月28日に日本原電の社長が原子力所在地域首長懇談会の席上で述べた言葉 東海第二原発の再稼働を目指してまいりたい」を文字通り素直に「再稼働の表明」と受け止めました。つまり、上記の「新安全協定」第2条第1項にある「原子力発電所を稼働及び延長運転をしようとするとき」は昨年の2月28日からスタートしていると考えていました。実際、大谷市長も、昨年の3月定例会で、原電社長の「再稼働を目指してまいりたい」発言を受けて「新安全協定のスタート」であるとの認識を述べられました。東海村の山田村長も同様です。

 ところが、今年9月の那珂市議会定例会で那珂市の先崎市長が、「原電社長の『再稼働を目指してまいりたい』は『再稼働の表明』とは認識していない。これは六市村・原電共通の認識である」、また「原電の再稼働表明が新安全協定のスタートであると六市村で共通に認識している」と述べたとのことです。つまり、「原電はまだ再稼働表明をしていないので、新安全協定はまだスタートしていない」と言うのです。しかしこれは、これまでの六市村首長の発言とは真逆の認識です。私は、新安全協定を使って、なし崩しの工事進行を止めるべきだと考えていましたので、このような認識の変化は驚きでした。そこで、いったいいつの間に、またどういう理由でこのような認識の変化が起こったのか、市側に質問しました。

◎市民生活部長の答弁

 東海第二原発に係る、対応における新安全協定の運用についてでありますが、昨年2月の首長懇談会において原電社長からの再稼働を目指してまいりたいとの表明を受け、六市村からは、今後行われる協議は新安全協定に基づく協議とさせていただくということを申し伝えました。

しかしながら、その後新安全協定に基づく事前説明がないことから、これまで開催した事務レベルの連絡会等において、事前説明の時期について確認を行ってまいりましたが、明確な回答がありませんでした。そのため、去る6月26日に開催した連絡会において、六市村から原電に対し、新安全協定に基づく事前説明をどのように考えているのか改めて確認したところ、原電側から、今後どのように進めていくのか自治体側と調整していきたいとの回答がございました。このため、市といたしましては、現在は新安全協定の第2条の運用には至っていないという状況にあるものと認識しております。

私の意見
私の意見

上記の六市村の論理によれば、新安全協定第2条の「事前説明」が原電側からないので、「意見交換」の段階には至らない。したがって、新安全協定はまだ使えず、なし崩しの安全対策工事を黙認している、ということになります。原電にとっては大変好都合な解釈、また六市村にとってもそれなりに居心地の悪くない状態ですが、しかし六市村のこのような姿勢は、結果的には国策への忖度へとつながるのではないかと危惧します。根本の問題は、時代に合わなくなった国策にあります。原発ゼロを含む、一刻も早いエネルギー基本計画の転換を望みます。

(2)広域避難計画策定について

 東海第二原発の再稼働問題を自分ごととして捉えるため、広域避難計画策定に住民も参加させてほしいという声があります。計画策定過程に住民参加型のワークショップなどを取り入れてみてはどうか、質問しました。


◎市民生活部長の答弁

 本市の広域避難計画につきましては、平成28年度、平成30年度と、これまでに2回の住民説明会を開催し、市民の皆様に計画の基本方針を説明させていただきました。そこで皆様からご意見を頂き、その内容を整理しております。昨年度は原子力災害地の避難方法等に関する住民アンケートを実施、市民が避難時にどのような行動をとるのか、市民の避難体制に係る基礎データの把握を行いました。

市民の安全を確保することのできる実効性のある広域避難計画は、市民の皆様が計画を理解した上で適正な避難行動をとれる、そういった形のものでなければならないものと考えております。ご提案の住民参加型のワークショップにつきましては、今後広域避難計画の策定を進めていく中で市民のご意見を聞く手法の一つと認識しております。

しかし、本市といたしましては、まずは基本的な防護措置、避難先・避難体制などの広域避難計画の基本方針について多くの市民に周知ができていないと捉えておりますので、この基本方針をどのような方法で周知していくか、そのことに重きを置いて取り組んでまいりたいと考えております。引き続き関係市町村、国や県と連携を密にし、情報共有を図りながら、市民の安全確保を最優先として実効性のある広域避難計画の策定に努めてまいります。
 

2.東海再処理施設について

とうに破綻している国の核燃料サイクル計画に基づいて、ウランとプルトニウムを取り出す目的で、国内の原発等で発生した使用済み核燃料を再処理した結果、原子力機構の東海再処理施設では現在、放射能を濃縮した約360㎥の高レベル放射性廃液がステンレス製タンクで保管されています。ドラム缶に換算すると約1,800本分に相当します。

今後、廃液(といってもドロドロの溶岩のような状態だそうです)が流れ出ないようにガラスに混ぜて固化する計画ですが、ガラス溶融炉のトラブルで計画が大幅に遅れており、かなり長期間にわたってタンク保管のままになりそうです。なお、2000年に制定された「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」によれば、高レベル放射性廃液は、約1万年以上にわたって生活環境から隔離するため、先ずガラス固化体とした上で、さらに放射性物質が飛散、流出、または浸透しないように措置して、地下300m以上の地層に埋設するとしています。

近頃話題になっている北海道寿都町等は、この最終処分場の候補地に名乗りを上げているわけです。しかし、これほどの措置を取らなければならないほど危険な核のごみが、実はここひたちなか市のすぐ隣の地上の施設内で、しかも液体のままタンクで保管されており、今後も相当の期間にわたって保管される可能性が高いというのです。現状では東海第二原発よりも危険な施設だと言われるゆえんです。


 さて、再処理施設で最も懸念される重大事故は、冷却機能の喪失による高レベル放射性廃液の蒸発乾固です。高レベル放射性廃液は大量の放射性物質を含んでいるため、常に冷却しなければ、発熱によって沸騰・蒸発・乾固・溶融し、大量の放射性物質が大気中に放出されるおそれがあります。例えば実際、設計津波(レベル1津波=数十年から百数十年に一度程度起こる発生頻度が高い津波)により、HAW(高レベル放射性廃液貯槽施設)とTVF(ガラス固化施設)の全交流電源喪失が想定されていますが、その場合、冷却機能が失われ、周辺環境に重大な影響を与えるような大規模な異常事態に拡大する可能性があります。海岸沿いの海抜6mの位置にあるこの廃止措置中の施設には、防潮堤を造る計画はなく、津波は施設を直撃します。

 また万一、タンクや配管が破損すれば、高レベル放射性廃液が流出し、放射性物質が大気中に放出されるおそれがあります。原子力機構自身がこのタンクは耐震性が低いと評価しており、最近原子力規制委員会に矢継ぎ早に提出されている「廃止措置計画の変更認可申請」において、破損する前提で対策を立てている事実があります。


 さらに、放射線分解により発生する水素による爆発を防ぐため、タンク内には常に空気を送り込まなければなりませんが、何らかの理由で送風が停止し、水素濃度が4%を超し、水素爆発を起こすと、タンクが破損して高レベル放射性廃液が流出し、放射性物質が大気中に放出されるおそれがあります。

 これらの事故が発生すれば、周辺の大気中あるいは海域へ大量の放射性物質が長期間にわたって漏えいすることとなり、わずか2.8㎞北にある東海第二原発は重大な影響を受けると考えられます。


 ところが原電は、東海第二原発と東海再処理施設とで同時に重大事故が起こっても、東海第二の事故対応には影響がないとの見解を示しています。本当にそうでしょうか。この点については今後、大いに議論の余地があると思っています。いずれにしても、東海第二原発の安全性検証や広域避難計画策定に際しては、東海再処理施設の存在を切り離して考えることはできません。しかし、東海第二原発の許可審査の際に、原子力規制委員会はなぜか東海再処理施設のことを考慮していません。この点について市はどう考えるか、質問しました。

◎市民生活部長の答弁
 
 東海再処理施設についてでありますが、日本原子力研究開発機構は、機構改革における事業の重点化、合理化に係る検討の結果、平成26年に東海再処理施設の廃止を決定しております。その間にも、東海再処理施設の機能を置き換えする施設として、日本原燃株式会社により六ヶ所再処理工場の建設が進められ、技術移転を行っているところであります。原子力機構におきましては、東海再処理施設につきましては、原子炉等規制法に基づき、原子力規制委員会にし、平成29年6月に東海再処理施設の廃止措置計画の認可を申請し、平成30年6月に認可を受けております。また、原子力安全協定第5条の2に基づく廃止措置計画書を県と東海村に提出し、県の原子力審議会や原子力安全対策委員会などにおける審議を経て平成30年10月に同意を受けております。


 廃止措置を進める一方で、東海再処理施設には、再処理に伴い発生したつねに冷却や攪拌が必要な極めてリスクの高い高放射性廃液が現在も約360㎥保管されております。このため、原子力機構におきましてば、東海再処理の廃止措置に当たっても、高放射性廃液のガラス固化処理や高放射性廃液貯蔵上の安全確保などのリスクの早期低減対策を講じることとしております。これらを安全確実に実施していくため、施設の高経年化対策と新規制基準を踏まえた安全性向上対策を重点事項として実施することを、廃止措置の基本方針に掲げております。

本市におきましては、原子力安全協定に基づき、これらの内容について原子力機構から説明を受けており、現在においては地震対策・津波対策などの安全対策の実施内容等を追加するなど、原子力規制委員会及び県に対して並行申請等が行われ、審査が進められております。市といたしましては、高放射性廃液のガラス固化処理の運転再開をはじめ、これらの安全対策により施設のリスク低減対策が講じられるものと認識しております。

 一方、東海第二原発につきましては、国による新規制基準適合性に係る一連の許認可の審査を受け、平成30年に一連の許認可を取得し、現在これらに基づく安全性向上対策工事が進められております。また、平成31年には、テロ対策として、特定重大事故等対処処理施設に係る原子炉設置変更許可の申請を行い、現在国による審査が行われているところであります。これらの国による一連の審査においては、地震・津波への対応、竜巻や火山などの自然現象への対応、航空機の衝突等のテロへの対応などの外部事象による対応についての審査が行われておりますが、他の原子力施設の事故による影響については審査対象外となっているのが現実であります。

原電がこれまで国の審査において評価をした外部事象による影響につきましては、国が定めた項目によるものであります。議員ご指摘のように、東海第二原発が再処理施設の事故影響を考慮した安全対策を講じることの是非については、国が判断すべきものと考えてございます。

<br>私の意見

私の意見

現在のトラブルの原因は、「ガラス溶融炉の流下ノズル部分で、熱膨張の不均一によってノズルが曲がり、加熱コイルに接触したため」とされています。
いずれにせよ、一刻も早いガラス固化処理技術の確立が待たれます。仮に東海第二の緊急事態から派生して東海再処理施設の制御もできなくなれば、双方が複合して途方もない被害に発展する可能性があります。

大久保清美 議会報告 第3号(2020.9月発行)PDF

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ひたちなか市議会9月定例会(一般質問)報告

YouTube動画 令和2年9月11日一般質問 大久保清美議員