6月定例会報告(2020)

大久保清美 一般質問 質問項目

1.東海第二原発の再稼働問題について
(1)住民に対する工事説明会を早期に求めることについて
(2)早期に市民の意思を確認し,結果を公表することについて
(3)「安全対策」の内容をただす協議会開催を求めることについて
2.「複合災害」対策について
(1)新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた避難所運営について
(2)感染症対策の広域避難計画への影響について


ひたちなか市議会6月定例会(一般質問)報告

コロナ禍に伴う緊急事態宣言がいったん解除され、私たちの下にも日常生活が徐々に戻りつつありますが、この間、大変多くの市民の皆様が経済的に困窮されております。私の下にもそんなお困りの声がいくつか届き、その都度、支援策をご紹介し、また市や社協に話を繋ぐなど、微力ながら、生活支援のお手伝いをしているところです。コロナ終息にはまだまだ時間がかかりそうですが、日常生活や経済活動の一日も早い回復を願っているところです。以下、6月定例会における私の一般質問とそれに対する行政からの答弁をご報告いたします。

1.東海第二原発の再稼働問題について

(1)住民に対する工事説明会を早期に求めることについて

3月26日付の原子力所在地域首長懇談会からの申し入れに対し、4月14日付で原電から、1.使用前検査は再稼働に直結しないこと、2.住民への説明を強化すること、以上の二点について確約する旨、文書で回答がありました。一点目の「使用前検査は再稼働に直結しない」とは、地元同意がなければ原子炉を起動して行う最終段階の検査(5号検査)はできない、という意味のようです。この確約が取れたことは、ひとまずは大きな歯止めになったと思われます。首長の皆様のご尽力に心から敬意を表します。しかし、二点目に関しては、その後、今日まで、原電による地域住民に対する説明会は開催されていません。コロナ禍の特殊事情があるとはいえ、一方で「安全対策工事」は着々と進められており、いまだ説明会の予定すら示されていないのは残念です。早期に各コミセン単位での説明会開催を要求します。3月定例会の一般質問でも要請しましたが、市からも再度、強く要求すべきと考えますが、いかがでしょうか。

●大谷市長の答弁
住民説明会開催の再度の要求については明確な答弁はありませんでしたが、説明会については「今後その具体的な計画について六市村に示されるものと認識している」との回答でした。



(2)早期に市民の意思を確認し、結果を公表することについて

6月8日、東海第二原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例案が、県議会本会議へ提出されました。直接請求のために必要な、地方自治法に定められた法定必要数(県内有権者数の2%)をはるかに超える86,703筆の署名が集まった成果です。私は、事の重大性に鑑み、東海第原発の再稼働には県民の意思が正しく反映されるべきと考えます。この意味で、この条例案の成立を心から願うものであります。(残念ながら、否決されましたが。)

ところで、今回の直接請求において、本市の有効署名数も法定必要数を上回り、住民の関心の高さが示されました。つまり、本市においても「市民投票条例」を請求できるレベルに達しました。3月定例会で大谷市長は、「今後、市民の声をどのように聞いていくのか、市民の声をどのように捉えていくのか、具体的に検討を進めていく」と約束されました。県民投票条例が審議されている今、もはや早すぎるということはありません。市長におかれては、何らかの形で早期に民意を問い、結果を公表すべきと考えますが、いかがでしょうか。

●大谷市長の答弁

今はまだその時期ではないとお考えなのかどうかは分かりませんが、「主として市民の声をどのように聞いていくのか、市民の声をどのように捉えていくのかを、今後検討を進めて参りたい」と従来の答弁を繰り返されました。


(3)「安全対策」の内容をただす協議会開催を求めることについて

原電が進めている「安全対策工事」は本当に安全対策になっているでしょうか。現在工事を進めているのは、防潮堤工事や耐震補強工事、電源工事等ですが、例えば、炉心を支持している大型構造物(シュラウド)は大丈夫でしょうか。シュラウドは炉心に近く設置されているため、浴びる中性子の量は桁違いに多くなります。そのため、ステンレス鋼材が著しく硬化したり、応力腐食割れが加速したりする、中性子照射脆化が起こります。これは経年劣化した原発に共通して起こる事象です。実際、同じ沸騰水型原子炉である原電敦賀1号機、東電福島1~3号機及び5号機ではことごとくシュラウドにひび割れが発生し、新しいものに交換する大掛かりな工事を実施しました。

中性子照射脆化でもう一つ問題なのは圧力容器です。1970年代に運転開始された原発の圧力容器には、銅などの不純物を多量に含んだ鋼材を使用しているため、中性子照射脆化の進行が速い危険性が大であると指摘されています。ところで、この圧力容器の脆化を「先取り」して知ることができるのが監視試験片です。この試験片は圧力容器鋼材の一部を切り出して作られ、容器の内側に置かれているのですが、監視試験片は当初用意した全4セットをすでに取り出し済みであり、現在は使用済試験片(試験後の端材)を再装荷しています。

30年余の稼働期間で当初の監視試験片をすべて使いきっているということは、当初の設計寿命が30年であるということの傍証でもありますが、それはさておき、使用済試験片を再利用する場合は、端材から再生試験片を作製します。その際、母材及び溶接金属の試験片は再生可能ですが、溶接熱影響部(HAZ)は幅が狭く、試験片の再生ができません。つまり今後、中性子照射脆化が最も心配される溶接熱影響部(HAZ)の状態は監視できなくなるものと思われます。



この他、再循環系配管のひび割れや炉内構造物の劣化状況の検出方法及びその精度、非難燃ケーブル問題等々、数々の問題を放置したままにしておいて、これで安全対策工事と言えるのでしょうか。六市村は、原電の計画した工事の進捗状況をただ聞くだけではなく、「安全対策」の中身をただす協議会の開催を原電に求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。


●大谷市長の答弁

新安全協定における協議会の開催につきましては、原電が東海第2発電所を稼働及び延長運転しようとするときは、事前に六市村に丁寧に説明するものとし、その事前説明による意見交換を踏まえ、さらに、必要があるときは合意形成を図るための協議会を開催するとしております。施設の技術的な安全対策の確認等につきましては、規制委員会の審査を経たきわめて専門的な問題であり、現在茨城県においても茨城県原子力安全対策委員会で審査が行われている状況でありますので、その内容について注視してまいります。本市といたしましては、引き続き原子力所在地域首長懇談会の構成自治体と連携を図りながら新安全協定に基づき適正な対応を図って参りたいと考えております。


私の意見
私の意見

上記の答弁にあるように、大谷市長をはじめとする首長懇談会は、技術的な安全対策の確認に関しては茨城県原子力安全対策委員会、さらには国の原子力規制委員会に一任するという姿勢です。しかし、原子力規制員会の運転延長認可の際の特別点検では、例えば圧力容器の超音波探傷検査において「検査が困難な箇所はやらなくてよい」としています。

つまり、既存の原発を救済するための「手加減した基準」が設けられているのですが、これで本当に安全が担保されるでしょうか。また、今年の2月7日に行われた茨城県原子力安全対策委員会の作業部会を傍聴しましたが、会議の雰囲気は一貫して原電への助言に終始している印象を受けました。これで本当に厳しい指摘ができるのか、心配になりました。

新安全協定に定められた協議会の開催には時期的な制約があるようですが、首長懇談会は技術的な安全対策の確認を人任せにせず、各市村の原子力アドバイザー等の意見も参考にしながら、早期に議論を深めて頂きたいと思います。

2.「複合災害」対策について

(1)新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた避難所運営について
内閣府の通知を受け、県が5月19日付で標記の通知を出しています。「3密」を避ける避難所を設営するとなると避難所の増設等が必要となりますが、本市の具体策をお聞きします。

●市民生活部長の答弁

避難所での感染拡大を防止するための対策につきましては、市が作成した新型コロナウイルスをはじめとする感染症対策を踏まえた避難所開設等に係る基本方針に基づき対応することとしております。避難所では、避難者全員の健康状態や体温を確認し、施設内の多くの部屋を活用することで、感染疑いのある方を振り分けるなどの対応を講じてまいります。また、定期的な換気や、避難者同士の十分な距離を確保することで3密を避けるほか、手洗い等の感染予防対策についても呼び掛けてまいります。避難所の運営に必要な備蓄品や資機材につきましては、現在備蓄しておりますマスク、消毒液、非接触型の体温計などに加え、簡易型の間仕切り、簡易テント、大型扇風機などを購入してまいり
ます。

2)感染症対策の広域避難計画への影響について

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、5月29日、国の「防災基本計画」が改訂されました。「防災基本計画」には原子力災害対策も含まれています。したがって、県も市町村も広域避難計画に感染症対策を盛り込まねばならなくなりました。つまり、「3密」を避けるために避難所の数を増やす必要が出てきたわけですが、現在の本市の避難先である県内外24市町村をさらに拡大することは可能でしょうか。また、人的資源の面でも各避難所での感染症対策にまで本当に手が回るでしょうか。感染症対策を踏まえた広域避難計画策定について、本市の見解をお聞きかせください。

●市民生活部長の答弁

もとより広域避難計画の策定におきましては、自力で避難できない災害弱者への支援、地震などの複合災害をはじめとする様々な事象への対応など、実効性のある計画とするために検討すべき課題が山積しております。さらに、当地域のUPZ圏内には約94万人もの方が生活しており、広域避難計画として求められる対策のレベル、困難さは、他の原発立地地域とは格段に違うものであり、その策定には大きな困難があるものと考えております。現在は、避難先市町村との避難受け入れ協議により避難受け入れのルール作りを具体的に進めていくという段階でありますので、まだ広域避難における感染症対策についての検討には至っておりません。広域的な避難を秩序立って円滑に実行するための避難先の設定、輸送手段の確保、複合災害を想定した対応策などについては、近隣市町村同士での連携、調整が不可欠であるとともに、国、県による広域調整が求められる大きな課題であり、今般の感染症対策についても同様と認識しております。

私の意見
私の意見

上記の市民生活部長の答弁にもあるように、私も、今回のコロナ禍を契機に避難計画に感染症対策が加わったことにより、実効性のある広域避難計画策定はますます困難になったと考えます。

大久保清美 議会報告 第3号(2020.6月発行)PDF

定例会ごとに議会報告を発行しています。ダウンロードしてご覧ください。


YouTube動画 令和2年6月11日 一般質問 大久保清美