12月議会定例会(2021年/令和3年度)

大久保清美 一般質問 質問項目

1.労働者協同組合法について
(1)新しい働き方としての「協同労働」について

2.広域避難計画策定の現状について
(1)避難所面積の見直しについて
(2)医療機関・社会福祉施設の避難計画策定状況について

3.原電への申し入れについて
(1)避難計画策定に資する原電の協力・支援を要請することについて


  1.労働者協同組合法について

1)新しい働き方としての「協同労働」について

2020年6月、与野党・全会派の合意・賛同を得て超党派の議員立法として提出された労働者協同組合法が、同年12月4日に全会一致で成立、2022年10月1日に施行されることになりました。この法律は、特定非営利活動促進法(NPO法)と並び、今後の我が国の市民社会にとって極めて重大な意義を有する法律といえます。

現在我が国においては、持続可能性を脅かす人口減少・少子高齢化・生産年齢人口の減少、またコロナ禍によってますます明らかになった雇用・就労形態の劣化、格差と貧困の拡大、富の分配の歪み、さらには生涯非婚者3割、独居世帯の増加などに見られる家族・世帯類型の変化などを通じて、市民が貧困の解消、福祉の増進等に強い関心を持つようになっています。しかし、このような市民の関心やニーズに対して、国や地方自治体といった「官」が迅速かつきめ細やかに対応することは、人的リソースにおいても財源的にも限界があります。また、民間企業をはじめとする「民」の取り組みは、CSR(企業の社会的責任)活動を通じて一定の成果を挙げているものの、そのような活動の実施・持続は企業の収益状況によるところが大きいとの難点があります。

このような状況の中、従来の「官」「民」という二極構造から脱却し、「公」というべき民間公益部門を充実させることは、社会的な要請となっています。社会構造を「官」「公」「民」の三極構造に転換していくことは、我が国社会の諸問題を解決する手段等を多様かつ豊かにすることであり、成熟した「市民社会」へと発展していくための必須の条件であることは、1998年のNPO法の制定時においても、主張されてきたところです。

こうした非営利活動への関心の高まりは、同時に「協同労働」という働き方への関心にもつながっていきました。市民が一般企業で働こうとする際、子育てや介護、あるいは病気や障害のため、フルタイムでは事業に従事することができない、通常の事務作業では能力を発揮できないなどの事情は往々に生じることです。そこで、事業を行おうとする市民自らが、やりがいを感じられる事業を創出し、主体的に働くことを通じて、地域の課題を解決し、地域に貢献しようとすることへの関心が高まっているのです。「協同労働」は、このような、自ら出資し、事業の運営に携わりつつ事業に従事する事業・労働形態を指すものであり、使用者の指示に従って事業に従事し、賃金を得るという従来の働き方とは異なるものとして、世界各地で注目され、実践されています。

労働者協同組合は、①組合員による出資(出資原則)、②組合員の意見を反映した事業の運 営(意見反映原則)、③組合員自らその事業に従事(従事原則)という協同労働の理念に従って事業が行われることを主眼とするものであり、労働者協同組合法では、これらの三つの原則を基本原理と位置付けるとともに、その趣旨を支え、あるいは具体化した規定を設けることで、協同労働の理念に従って事業が行われることを法律上担保しています。この点が、他の協同組合やNPO法人との大きな違いといえます。

もちろん、労働者協同組合法人も非営利組織と厚労省は定義しており、広い意味でNPOのひとつであるといえます。しかし、繰り返しになりますが、NPO法人との違いは、働く人が自ら出資し、それぞれの意見を反映して自らが事業に従事し労務の対価を得るという、働く人が主体となって運営する組織ということです。また、NPO法人は事業領域が限られますが、労働者協同組合は、労働者派遣事業を除くすべての事業が可能です。

さらに、シルバー人材センターや社会福祉協議会など地域にはこれまで多様な地域課題を担う組織があり、労働者協同組合法人はこれらを否定するものではありません。今後一層地域課題が増えていく中、地域で活動する多様な選択肢が必要であり、非営利で持続可能な事業体として新たな選択肢が増え、これまでの地域団体とも共存するものだと思います。

茨城県・千葉県における具体的な事業例を挙げれば現在、高齢者介護・福祉、子育て支援(学童クラブ、保育園等)、若者や生活困窮者の自立支援、障がい者自立支援、配食、物流、病院清掃、公民館等指定管理者業務等を行っています。また、地域活動(社会連帯活動)では、子ども食堂、フードバンク、地域の居場所づくり等を行っています。

ところで全国では、ワーカーズコープ、ワーカーズ・コレクティブ、生協、社協、労福協、 JA等が「協同労働推進ネットワーク」を立ち上げ、行政に働きかけを行っている県がありますが、茨城県においてはまだそのような動きはないようです。また本市においても、例えば子育て支援事業を行っている方から、ボランティアの人件費不足を嘆く声をお聞きしていますが、現在のところ、労働者協同組合を作ろうというような動きはないようです。しかし、コロナ禍において仕事を失う人が増え、年金だけでは暮らしていけない高齢者が増えている中、地域の新たな仕事おこしとして、またまちづくりとして、この労働者協同組合が期待されるところです。そこで、お伺いします。この協同労働および労働者協同組合法について市はどのような認識を持ち、どのように対応しようとお考えですか。

経済環境部長の答弁

この協同労働の仕組みは、元気で意欲にあふれ豊かな知識と経験を持った人が、他人に命じられることなく自ら発意して主体的に関わりながら働くことが可能となりますことから、新たな就業形態の形成に寄与することが期待できると認識しております。また、充実した働き方や生き方が実現されるほか、働き方の選択肢が増えることにより、多様な就労機会の創出等を促進するとともに、地域コミュニティーの構築や再生につながることで、郷土愛を育む可能性があると考えております。さらに、本市は住民相互の支え合いの精神により、地域の課題を自らの手によって解決できた市民力が高い町であると認識しているところであります。つきましては、令和 4 年10月 1 日に行われる法の施行に合わせて協同労働の考え方や取り組みが普及することで、これらの地域課題に対する活動がさらに活発化することも期待できると考えております。同法については、現在国において法の施行に必要な関係政省令や指針の準備が進められているところであり、まだ明らかにならない部分も多い状況にあります。今後につきましては、国県および他市町村の情報や動向を注視しながら、本市における状況も踏まえつつ、労働者協同組合の仕組みが本市においても有効的に活用できるよう進めてまいります。

再質問に代えて(要望)

前向きなご答弁を頂き、ありがとうございます。それでは、本市における労働者協同組合設立の後押しとして、以下の 3 点を要望します。

① 広報・周知活動として、住民、市職員、関連団体(協同組合、労働組合、NPO等)等を対象とする労働者協同組合法に関する学習会の開催

② 労働者協同組合(法)に関する相談窓口の設置

③ 「協同労働プラットフォーム」の設置

③について少し補足しますと、先に述べたように、県によっては、協同労働推進ネットワークがプラットフォームの役割を果たしている所もありますが、本市においては、最初は行政主導もやむを得ないと考えます。そのような例として広島市が挙げられますが、広島市協同労働プラットフォームは、市がコーディネーターを配置し、シンポジウム→地域学習会→事業計画づくり→プレゼン→協同労働団体設立、などの業務を担っています。

<meta charset="utf-8">私の意見
私の意見

私の要望に対する回答は「上記①については実施予定、②、③については今後検討する」とのことでしたが、②、③についてもぜひ積極的な導入を期待します。

2.広域避難計画策定の現状について

(1)避難所面積の見直しについて

10月12日の県議会での知事答弁で、県が避難所での 1 人当たりの居住面積を見直しているという発言がありました。また本市でも現在、避難先自治体からの回答を基に、避難所面積の確認・調整を行っているとのことです。これらの動きはもちろん、避難所の面積にトイレや通路などの非居住エリアが含まれていた問題、さらには新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、感染症対策を踏まえた避難所運営が求められるようになった結果です。

ところで、水戸市の県外避難先の一つである千葉県松戸市が、感染症対策を踏まえ、従来の

1 人 2 ㎡を変更し、1 人 4 ㎡で受け入れる旨を表明していることが明らかになりました。また、本市の県外避難先である千葉県佐倉市においても 1 人 4 ㎡で回答してきている旨、仄聞しております。そこで質問ですが、本市の県外避難先である千葉県の10市町の回答状況をお聞きします。

また県は『新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた避難所運営マニュアル作成指針』(令和 3 年 9 月改訂版)の中で「避難所レイアウトの検討」として、パーテーションテント等を活用し、 1 人当たりの居住面積(通路含む)が 3 ㎡ないし4.5㎡となる 3 つの例を新たに市町村に提示しました。そこで、今後はこの指針に基づいて県内外の避難先自治体との協議をし直すのかどうか、お聞きします。

市民生活部長の答弁

避難所の 1 人当たりの面積についてでありますが、県内の14市町村につきましては、一律に1 人あたり 2 ㎡という県が設けた基準により取り組んでまいりました。一方、同じく本市の避難先である千葉県内の10市町につきましては、これまでの本市との避難受け入れ協議の中で、避難所面積の考え方を統一したいとの意見が出されたことから、県と千葉県との調整において、一律に 1 人当たり 4 ㎡という基準を設けて取り組んできたところであります。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、県では感染症対策やプライバシー確保の観点から、令和 3 年 9 月に『新型コロナウイルス感染症対策を踏まえた避難所運営マニュアル作成指針』を改定しました。また、 1 人当たりの避難所面積を広げることも含めて、第 1 の避難先となる避難所の拡充について、県が主体となって協議を開始したところであり、本市においても県と連携して取り組んでいくこととしております。

<meta charset="utf-8">私の意見
私の意見

本市の有床医療機関については16施設のうち12施設が、社会福祉施設については64施設のうち26施設が、まだ避難計画を策定できていないことが明らかになりました。策定済みとされている病院・施設においても避難用の救急車や福祉車両が不十分であることは指摘されているとおりです。自治体の避難計画同様、これらの病院・施設の避難計画についても、今後その実効性に注目していく必要があるでしょう。

*この他、避難計画を策定する上で重要となる事故想定や事故進展のシナリオの早期の提供を日本原電に求めるよう、大谷市長に再度要望しました。