令和4年度 6月議会定例会(2022)

大久保清美 一般質問 質問項目

1.中学校部活動の地域移行について
(1)「ひたちなか市部活動の活動方針」は遵守されているか
(2)部活動の学校における位置付けの見直しについて
(3)地域移行に付随する諸課題について
(4)教員の働き方改革について

2.東海第2原発の再稼働問題について
(1)5月9日に行われた6市村首長と日本原電との意見交換会について
(2)避難計画策定が不十分でも原電が事前同意を求める可能性について
(3)屋内退避を原則とした避難計画について
①原子力災害対策指針は災害対策基本法の目的に沿ったものか否か
②避難弱者(病院・施設,母子)の声を聴くことについて
③放射線防護対策工事(陽圧化)施設について


1.中学校部活動の地域移行について

◎質問
部活動改革に関する県教育委員会の有識者会議が、部活動の運営を地域や民間団体に委ねる「地域移行」の推進を求める提言をまとめ、去る5月16日、県教育長に提出しました。提言を受け、県教委は「県部活動の運営方針」を年度内に改定する方針です。これは、部活動を学校教育の一環と定める学習指導要領からの「歴史的転換」です。そこでこの地域移行に関し、その意義、付随する諸課題、教員の働き方改革、今後のロードマップ等について、市教育委員会の所見をお伺いします。

●野沢教育長の答弁(抜粋)
中学校の部活動につきましては、これまで技術や技能の向上のみならず、生徒指導等の面に
おいても大きな存在感を示してまいりました。その結果、長年にわたり、生徒の体力や技術の
向上はもとより、豊かな人間性の育成にも寄与してきたと認識しております。しかしその反面、
勝利主義に傾倒し、生徒が心身に疲労を蓄積させ燃え尽きてしまい、生涯にわたってスポーツ・
文化芸術活動を楽しむことができなくなるといった事例なども報告されております。

私は教員の頃、文部省教員海外派遣でイギリスに行き学校視察をした際、学校が終了した後、生徒が様々な場所に行き、自分の好きなことに熱心に取り組んでいる姿を垣間見ることができました。学校教育が生徒に対して質の高い学びを保障することを前提として、学校の環境に縛られることなく、生徒一人一人が自らのニーズに応じたスポーツ・文化芸術活動を楽しむことができる環境を整備することは必要であると認識しております。


次に、地域移行に付随する諸課題についてお答えいたします。一つ目の課題の外部指導者の確保についてですが、現在本市では、顧問と同様に部活動ができる部活動指導員が3名、顧問と一緒に指導する外部指導者が21名おります。部活動指導員につきましては、県の研修を受けながら部活動を指導しております。

しかし、生徒が地域においてスポーツを行う機会を確保するためには、質・量ともに十分な指導者が不可欠であり、そのための確保が必要になってくると認識しております。指導者につきましては、公認コーチ等の有資格者の育成や発掘、確保も含め、指導者資格の取得や研修の実施を促進することも課題となってきます。

二つ目の課題の経済困窮家庭への補助につきましては、原則部活動にかかる費用につきましては受益者負担ですが、今後会費や保険料などの保護者負担が増えることが懸念されます。様々な施設の利用や、困窮する家庭への対応などが課題であると捉えております。

三つ目と四つ目の課題の地域移行パターンと運営主体の支援につきましては、全国のモデル校での事例では、それぞれの地域の特色によって様々な移行パターンが紹介されております。
本市には多くのスポーツ団体や文化芸術団体が活動しておりますので、様々な見識者からご意見をいただきながら、適切な地域移行のパターンを検討する必要があると考えております。まずは教育委員会で生徒や地域の実態を把握し、部活動検討組織委員会において関係各課やスポーツ団体等と連携を図り、本市の実態にあった地域移行ができるよう、運営主体の設定や連携、支援も含めより良い方向性を示していけるよう協議を進めてまいります。

五つ目の事故補償についての保険の整備につきましては、地域のスポーツ団体等に対しての指導者や会員への保険加入も考えられます。現在スポーツ安全保険について災害共済給付と同程度の補償となるよう、国からスポーツ安全協会に補償内容の充実を要請している状況です。

次に教員の働き方改革についてお答えいたします。(部活指導者としての)兼職・兼業、教員の許可条件や基準に関しましては、兼職・兼業と勤務時間外在校時間等を合わせた上限について、過労死ラインと言われる月当たり80時間を超えないことは当然ながら、45時間を超えないようにし、希望教員の健康管理を最優先に考慮して、本業に支障をきたすことのないようにすることが肝要であります。土日両日の兼職・兼業につきましては、国も課題として捉えておりますので、今後も国や県の動向を注視してまいります。

最後に、今後のロードマップといたしましては、2022年は教育委員会内で部活動改革準備委員会を設け、部活動改革に関係する人で構成する検討組織委員会立ち上げに向けて、準備を進めていく予定です。そして、検討組織委員会を中心に今後の部活動改革を推進してまいります。

また、保護者の部活動地域移行に関する意識調査や、教員の兼職・兼業希望調査を実施したり、地域の方の人的資源の調査をしたりして実態を把握する必要もあると認識しております。

2023年度は、モデル校を設置し、地域と連携し、できる種目から部分的に地域移行を進め、本市として実現可能な手法について検討し、体制の構築を加速化させてまいります。2024年度は、モデル校を拡充し、地域移行に向けて複数の筋道があることや多様な方法があることを強く意識し、さらに改革を推進させてまいります。そして2025年度には、全ての中学校、義務教育学校で休日の部活動地域移行を目標にしております。

<strong>私の意見</strong>
私の意見

スポーツ庁の試算によれば、部活動を地域移行すると、現在より一人当たり年間17,000円ほど指導員や保険の費用が高くなるとのことです。静岡県掛川市の教育委員会が昨年実施した調査によると、地域移行に反対すると答えた中学校の保護者のうち47%は費用負担を理由に挙げたということです。ただ一方で、日本の部活動はこれまで、教員の善意によって支えられてきたという側面があります。今後は、教員の働き方改革の観点からも、社会全体の意識改革が必要です。教育委員会には、保護者への丁寧な説明をお願いします。

2.屋内退避を原則とした広域避難計画について

(1)木造住宅の被ばく低減効果は約50%に過ぎない

◎質問
県や市町村の避難計画の基本となっている「原子力災害対策指針」では、屋内退避を原則とすることにより、住民が被ばくすることを前提・容認しています。実際、多くの住民が暮らす木造住宅の被ばく低減効果は50%くらいしかありません。それにもかかわらず、空間線量率が20μSv/h ないし500μSv/hになるまでは「屋内退避せよ」というのを、住民が納得できるとは思えません。500μSv/hというのは、わずか2時間で一般公衆の追加被ばく線量限度(年間)に達する線量です。住民を屋内退避させるというのなら、全家屋の「陽圧化」ないし「シェルター化」を補助金でやるべきではないでしょうか。それができないならば「さっさと逃げよう」となるわけで、そうなれば「段階的避難」は破綻し、交通渋滞で大パニックになることでしょう。

●市民生活部長の答弁
全家屋の陽圧化についてでありますが、市内の全ての家屋に放射線防護対策工事をすることは困難であります。しかし、原子力災害時の防災対策といたしましては、屋内退避を行うことにより放射線被ばくを低減することが原子力規制庁の調査研究事業においても有効とされております。原子力災害時には、住民の皆様が防護対策を正しく理解した上で適切な避難行動を取っていただく必要がございます。そのため、本市においては今年度、原子力災害対応ガイドブックを作成配布し、屋内退避の主旨や有効性について周知を図ることとしてございます。

(2)妊婦・子供の優先避難を求める

◎質問
実効性のある避難計画を作るには、住民の理解と協力が必須です。しかし、特に妊婦、そして乳幼児・園児・小中学生・高校生の子を持つ親が、段階的避難や屋内退避で我が子の被ばくを容認できるかという問題があります。原子力災害対策指針では、PAZ内の妊婦と乳幼児は「施設敷地緊急事態要避難者」となっていますが、UPZの妊婦・乳幼児は要避難者とはなっていません。

本市には妊婦が約1,000人、乳幼児(0~2歳児)が約3,300人いますが、大半がUPZ圏内ですから、要避難者ではないことになります。しかし、これらの母子が何としても被ばくを避けるべき存在であることは明らかであり、それゆえ市はこれらの母子を要避難者と位置づけ、屋内退避をさせずに、バス等で優先的に避難させるべきと考えますが、いかがでしょうか。

また、その他の子供たちの被ばくについても市の考えをお聞きします。

●市民生活部長の答弁(抜粋)
UPZ圏の妊婦や乳幼児の避難についてでありますが、UPZ圏においては、国の原子力災害対策指針の考え方に基づき、屋内退避後に避難することを基本としているところであります。

次に、その他の子供たちの被ばくに関するご質問でございますが、放射線防護対策には、子供や妊婦に限らず被ばく線量を低減化させることが重要であります。本市においては、防護対策の一つとして、安定ヨウ素剤を緊急時に即座に服用できるよう、市独自に全市民を対象に、丸剤のほか、3歳未満にはゼリー剤を事前配布しているところであります。

<strong>私の意見</strong>
私の意見

何としても被ばくを避けるべき妊婦・乳幼児・子供たち(とその親)については、屋内退避をさせずに優先的に避難させるよう求めたのですが、市からはゼロ回答でした。今後、継続的に議論していきます。

(3)放射線防護対策工事(陽圧化)施設について

◎質問
現在本市で陽圧化工事済みの医療機関・福祉施設等は、勝田病院など8施設と認識していますが、補助金の対象となる、原発から概ね10km圏内に限っても、対象となる病院・施設はまだあると思います。そこで、対象となる病院数・施設数をお尋ねします。また、今後もまだ工事の予定があるのか、お尋ねします。

ところで、陽圧化工事をした病院・施設の患者・入所者・スタッフは、周囲に一時移転指示が出ても、そのまま屋内退避を続けることになると思われます。そもそも病院・施設の陽圧化の意味は、患者・入所者の避難行動に伴うリスクを考えて「避難させない」ためのものだからです。しかし、それにも限度はあるでしょう。市は陽圧化施設に患者・入所者・スタッフをいったい何日間屋内退避させるつもりなのか、さらには一般住民も屋内退避を何日間続けることを想定しているのか、お聞きします。

●市民生活部長の答弁
病院や社会福祉施設の放射線防護対策工事についてでありますが、対策工事につきましては、施設入所者など即座に避難できない方が避難までの間に屋内退避する施設において、建物の機密性を確保し内部の気圧を高めることで放射性物質が入り込まないよう防護対策を講じるものでございます。この放射線防護対策につきましては、県が国の原子力災害対策事業費補助金を活用し、実施しているところでございます。

その対象といたしましては、東海第2原発の周辺、概ね10km圏に所在する病院等の施設であること、原子力災害で放射性物質が放出された場合において、避難するための福祉車両が確保されるまでの一定期間入所者が滞在する必要がある施設であること、などの要件がございます。本市域においては、これらの要件を満たし、対策工事を行う意向を示した病院等の施設として、これまで、勝田病院やサンフラワーひたちなかなど、対象47施設のうち8施設の対策工事が完了しているものと把握しております。

今後の対策工事につきましては、現在のところ、市内の施設から要望はないと県から伺っておりますが、工事の意向があった場合は、補助金を活用し、対策が講じられていくものと認識しております。

次に、UPZ圏の屋内退避後の避難についてでありますが、国の原子力災害対策指針では緊急時モニタリングの結果を受けて防護措置の実施を判断する基準を設けております。その判断基準といたしましては、毎時20マイクロシーベルトを超えたときは、一日内を目途に区域を特定し、1週間程度内に一時移転を実施。また、毎時500マイクロシーベルトを超えたときは、数時間内を目途に区域を特定し、避難等を実施するという考えになっております。また、防護対策が講じられた施設の入居者等につきましては、福祉車両が確保され次第避難を行うものと認識しております。

<strong>私の意見</strong>
私の意見

原子力規制委員会の委員長や原子力機構の幹部が揃って、屋内退避の期間はせいぜい3日~4日が限度と言及している中、市は、一般住民については1週間、陽圧化施設の患者・入所者・スタッフについては、いつ来るかも分からない福祉車両が来るまで屋内退避をさせるつもりです。その間の惨状を想像すれば、この屋内退避を前提とする避難計画の非現実性がよくわかります。実効性のある避難計画からは程遠いものだと思います。

◎再質問
原子力災害時に災害対策拠点となりそうな本市の市役所、消防署、警察署はすべて、東海第2原発から概ね10km地点にありますが、補助金を得て陽圧化工事はしないのでしょうか。

●市民生活部長の答弁
現時点では市役所庁舎の放射線防護対策工事を行う予定はございません。市役所庁舎につきましては、原子力災害時の対策拠点となりますので、対策工事につきましては避難計画を策定していく中で検討をしてまいりたいというふうに考えてございます。また、消防や警察におきましては、対策工事の予定はないというふうに伺ってございます。